058 神の子どもたちはみな踊る/村上春樹

神の子どもたちはみな踊る
 阪神大震災に関する短編集(連作?)。
作品ごとの感想でも。



・UFOが釧路に下りる

「小村さんは、遠くに来たかったんですか?」
「多分」

 リアルでこんな受け答えしたら怒られるんだろうなぁと思った。
 でもまだ始まったばかりなのよっ!


・アイロンのある風景
 焚き火の話。
 結局焚き火は何のメタファーなのだろう。


神の子どもたちはみな踊る
 宗教家の母を持つ男の話。
 神の子どもたちはみな踊るのだ。


タイランド
 休暇をタイで過ごす女性の話。
 生きることと死ぬこととは、ある意味で等価なのです。


・かえるくん、東京を救う

 片桐がアパートの部屋に戻ると、巨大な蛙が待っていた。

 この冒頭文は、『雪国』に匹敵するくらいインパクトがあると思う。
 一体どんな物語なんだろうと、好奇心を激しく刺激される強烈な一文である。


・蜂蜜パイ
 この中で1番好きなお話。
 作者は常々、「『村上春樹』的な文章は書きたくない」と言っているが、
 それが顕著に現れている作品である。
 起承転結がはっきりしていて、メタファーも比較的わかりやすい。
 なんかに似てるなぁと思ったのだが、
 そうだ、乙一の『しあわせは子猫のかたち』に終わり方が似ているのだ。
 とにかく好き。

久方ぶりに。

 最近読んだので憶えているのだけでも。
●055 ZOO 1 (集英社文庫)乙一
ZOO〈1〉


●056 ZOO 2 (集英社文庫)乙一
ZOO〈2〉


短編集なので1作ずつ感想でも。
・カザリとヨーコ
 いかにも乙一っぽいお話。登場人物のセリフが妙に軽いのがちょっと気になる。
 「よっしゃー」とかな。なんか意図があってのことかな。
・SEVEN ROOMS
 正直よく憶えてない。
・SO-far そ・ふぁー
 これは実は映画の方から見た。一時期ヤフーで無料で見れたので。
 神木隆之介って最近どの映画にも出てるイメージがある。
 「神木クン使っとけばいいんじゃね?」みたいな空気を感じる。
 乙一特有の設定だけど、映画を見たせいかあんまり乙一っぽくないなと思った。
・陽だまりの詩
 愛とかそういうのについてのお話。いわゆる白乙一ライトノベルっぽい。
 別に批判してるわけじゃなくてむしろ好き。
・ZOO
 頭のおかしい人の話。乙一が書くとどうも怖くない。そこが魅力。
・血液を探せ!
 朝起きたら何者かに刺されて血まみれだった資産家のお話。
 これでもかってくらいノリが軽い。
 うるさいうるさい、カモノハシは悪くない!
・冷たい森の白い家
 ダークファンタジーという感じ。今まで書いてそうで書いてなかった種類かも。
 相変わらず乙一が書くと怖くない。そしてそこが良い。
・Closet
 なんかこういう都市伝説ありそうだよねー。
・神の言葉
 こういう特殊能力を持つ人間を主人公にしたお話って、
 書き手によってずいぶんノリが違うと思う。
 「ぼくのメジャースプーン」とか「クロスファイア」とか。
 いや、クロスファイア読んでないけど。
・落ちる飛行機の中で
 ハイジャックされた飛行機の中で、苦しまずに死にたい女性と
 安楽死の薬を売ろうとするセールスマンの話。
 オチがちょっと弱いかなぁと思った。
・むかし夕日の公園で
 これまた都市伝説にありそうな話。4ページというショートショートでありながら
 乙一らしさが出てます。


●057 「これだけは、村上さんに言っておこう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける330の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?村上春樹
「これだけは、村上さんに言っておこう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける330の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?


村上春樹のエッセイのノリが好きな人にはオススメ。
真面目に相談に乗ったり、適当に返したりと村上春樹の性格が好きな人ならまず楽しめます。

054 キスまでの距離/村山由佳

おいしいコーヒーのいれ方 (1) キスまでの距離 (集英社文庫)
キスまでの距離―おいしいコーヒーのいれ方〈1〉


 この間50円で買ったやつ。
中学生のころ読んだ時はそれなりに楽しめたと思うのだが、
今読むと正直いろいろキツイ。
もともとジャンプJBOOKSということもあって、ライトノベルともちょっと違う
ジュブナイルな感じが読んでてどうも気恥ずかしい。
嫌いじゃないんだけどね。このお約束的な雰囲気。
でも俺の中の何かが素直に楽しむことを許さないの。


あと、この作家の他の作品でも思うことなのだが、
キャラのセリフや仕種などの描写が変に若者ぶっているのがイヤだ。
小説においては、登場人物に無理に流行り言葉や若者言葉をしゃべらせる必要は
ないんじゃないかと思うんだけどどうだろうか。
描き方にもよるが、「マジで!?」みたいなセリフでも、俺はときどき引いてしまう。
今現在の村山由佳が書いたら結構面白そうな気もするけどな、この作品。

053 村上朝日堂はいかにして鍛えられたか/村上春樹

村上朝日堂はいかにして鍛えられたか (新潮文庫)
村上朝日堂はいかにして鍛えられたか


 もう何度も何度も読んでるエッセイ。
村上春樹のエッセイの中でも最もバランスの取れた1冊だと思います。おすすめ。


関係ないけど、今日本屋に行ったら
「ミステリー」だとか「ホラー」だとかそういうジャンル分けの中に
「ライトエッセイ」なるジャンルがありました。
初めて聞く言葉だ。ライトノベルの作家が書いたエッセイってことなのかしらん。

052 ぼくのメジャースプーン/辻村深月

ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)
ぼくのメジャースプーン


 辻村深月待望の4作目。今日の朝4時まで読んでた。
以下、簡単なあらすじを。




主人公である小学4年生の「ぼく」は不思議な力を持っている。
「Aという条件をクリアできなければ、Bという結果が起きる」
といった言葉を発することで、言われた相手はその条件のとおりに動かなければならない。
例えば、「今見たことを忘れろ。さもないと死ぬ」など。
作中では「条件ゲーム提示能力」と名づけられている。


ある日、「ぼく」の通う小学校で、飼っているウサギが
近くに住む大学生に惨殺されるという事件が起こる。
犯人に遭遇し、事件現場を見てしまったふみちゃんという少女は、
ショックを受けしゃべれなくなってしまう。
「ぼく」は自分の能力を使って犯人に罰を与えようと考える。
「ぼく」は同じ能力を持つ「先生」の元へ通い、犯人にふさわしい「罰」を考えていく。
最終的に「ぼく」が選んだ罰とは―――。




 デビュー作にあったようなミステリ風味はほとんど影を潜めて、
文学性というか物語性というか、そういったものに力を入れてるような気がする。
テーマは「悪意」。そして「罪と罰」。
全体の6〜7割が「ぼく」と「先生」の議論なので、人によっては死ぬほど退屈に思えるかもしれない。
俺はこういう限定されたテーマというか、焦点が絞られた話が割りに好きなので一気に読めた。面白かった。
最終的に「ぼく」が選んだ答えや、犯人の顛末には賛否両論分かれるかなぁという印象。
テーマがテーマなので、読み終わってスッキリ!というようなミステリ的爽快感はあまりないけどなかなか良さげだった。
あと、作者の2作目である「子どもたちは夜と遊ぶ」と微妙にリンクしてるので、ファンとしてはニヤリとさせられる。


自分の周りには、積極的に小説を読む人が少ないので、
もし読書に多少なりとも興味がある人には、この辻村深月の作品を読んでほしいなーと思う。
何ていうか、思わず人に薦めたくなる作品ばかりなのである。興味ある方は是非。

051 夢で会いましょう/村上春樹 糸井重里

夢で会いましょう (講談社文庫)
夢で会いましょう


 村上春樹糸井重里が小説ともエッセイともいえない、
何だかよくわらない作品を書きまとめたものである。
交互に書いてる(掲載されてる)わけでもなく、雰囲気もバラバラである。
かなり頭のおかしい内容なので万人にはオススメできない。
収録作品の中では村上著の「K」が1番好きである。
俺も女子寮の玄関マットになりたい―――というわけでは決してない。